ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第19巻
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国際印刷大学校研究報告 第19巻
7『広告表示と価値創造』■差を無くし、需要を急増させた。情報通信機器ICTの利便性、低価格化は、一方であらゆる産業の労働生産性を変革させ、他方で印刷物の利便性の限界を顕在化させた。経済先進国の1人当たりICT機器量(固定・携帯電話、パソコン、インターネット接続回線数)は1998~2015年に平均年率5.9%で増えている。アフリカのICT機器量は2015年時点で先進国の1/4であるが、先進国の増加率が鈍化、両国間の差が縮小傾向にある。出典:篠崎彰彦(2017)「イノベーションの奔流とグローバル経済の発展」研究技術計画Vol.32,No.1,pp31-38.世界の広告企業のインターネット媒体と雑誌・新聞媒体の売上高は2011年に逆転、07年と16年の9年間に前者が4倍増、後者が半減している(図3)。出典:WARC(2017)。 系統1の単位は千万ドル。系統123456789全体雑誌インターネット新聞テレビ北米アジア太平洋州欧州中東3 日本の印刷業の経営形態の特徴と課題印刷物は2次元静止視覚情報の表示、流布に貢献してきたが、嵩張り、重く、運搬道具が必須、かつ電気機械操作の機能が無く、情報媒体としての利便性、用途が局限される。印刷物の用途は電気が不要な表示、装飾の用品分野へ縮退している。英国の印刷業は1930年代から植民地の独立、米国発の大恐慌に遭遇し、売上高が低迷し、人件費の高騰に印刷作業の国外移管で対応した。印刷業の従業者数は最盛期の1桁以下へ縮小中である。日本の印刷業は創業以来、経営資源の不足を同業者同士の業務相互委託(売上高の約3割)で補完している。この経営形態は業務の相互委託を好まない欧米企業の形態と異なる。しかしながら、日本の印刷業の売上高も1990年代以降から年率2.7%で逓減中している点で同じである。日本の小規模(4~29人)印刷事業所に勤務する従業者数が全従業者(4人以上)に占める比率は製造業事業所の1.55(=41.4%/26.8%)である。印刷業の従業者は製造業と比べて小規模事業所で働く比率が高い。小規模と中大規模(30人以上)印刷事業所の1人当たり加工賃収入額は同額2.3 百万円である(表1)。しかし、小規模の付加価値額は中大規模の58.9%(=6.01/10.2)である。即ち、中大規模事業所は機械装置の取得で付加価値を高めている。また、圧電素子は加電で伸縮し、21世紀に振動圧で液滴状にしたインクを紙へ直接噴射する印刷に応用された。印刷機器の小型化、低価格化は、個人宅内での複写作業を容易にした。欧米の印刷工場の複写作業は2020年頃にロボット・半無人化されると予想されている。図3 媒体別世界の広告費の推移(2007~16年)