ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.

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概要

国際印刷大学校研究報告 第18巻

6■国際印刷大学校研究報告第18巻(2018)手段として王座をしめていた。近年、ネットの普及とともに若い世代の活字離れから新聞離れが生じ、発行部数が減少し続けている。新聞の電子版の登場で部数減少に拍車がかかっている。新聞の危機は新聞広告の減少にもみられる。新聞メディアが巨大になったのは広告収入増加であった。1960年の広告面比率が30%に足らず購読料によって運営されていたが経済が活発になると広告面が43%余にまで上昇する。民間ラジオ、テレビの出現後も広告面が増加した。しかし社会の電子化とともに部数も広告収入も減少している。新聞と共に情報を伝えるメディアに定期刊行物がある。雑誌の歴史も古く月刊誌が1867年、週刊誌が1887年に始まっていて日本人の好奇心の高さを示している。コミック雑誌が発行部数の記録を更新して景気の良い時代があったが、近年どの雑誌も発行部数を減らしている。廃刊になる雑誌が多い反面、新たに誕生する雑誌もあるが発行部数は減っている。米国の雑誌印刷会社の成長率は2000年頃が最大で、その後成長率は低下している。教科書の印刷は学制が定まった1872年以来就学児童が増えると同時に子供の数が増えて印刷部数を増やしていった。1873年当時の小学児童数133万人(就学率28%)が1890年には468万人(81%)になった。児童人口が増えると同時に就学率が100%になった1985年には小学児童数は1100万人を超えた。同時に高等教育への進学率が高くなり、1995年の就学者数は大学生を含めると2500万人近くなった。その教科書、参考書類の発行部数は莫大なものである。近年児童数の減少と共に文科省は教科書の電子化を計画している。書籍印刷は米国のデータで説明する。米国では教科書も書籍に含まれていて書籍の売り上げ金額の何%を占めたか順にしめす。1. 教科書(小学~高校)34.2億$、20.8%2. 教科書(高校以上)19%3. ペーパーバック(廉価本) 7.9%4. ブッククラブ 7.9%5. 宗教 7.4%6. 会員学習書 4.8%書籍印刷の中で教科書の占める割合が高いのは何処でも同じである。教科書以外の書籍の今後については書籍の購読者が高年齢者で団塊の世代が続くことと高学歴化によって順調に成長するとしている。一方、電子書籍が普及して、特に廉価本に電子化が進んでいる。教科書のデジタル化は警戒されている。教科書を除いた書籍印刷の成長率は横ばいと考えているようである。印刷産業がここまで発展してきたのは主に商業印刷、ダイレクトマーケティング、カタログ印刷によるものである。米国における印刷企業は商業印刷、関係が殆どである。しかし商業印刷の先行きについて楽観視していない。受注量、利益とも過去のような成長は期待できず横ばいとみている。印刷業界で好調なのは包装、ラベル、包装紙印刷である。包装関係はスーパーマーケットでもインターネット取引でも必要であり、他の印刷物と比べて電子媒体に代わられる恐れが無い。ビジネスフォーム印刷はかなり前からマイナス成長に陥り、これをどう乗り越えるか努力中である。将来予測ではマイナスの度合いが減っていくとしている。2 電子情報2-1 電信・電話20世紀初頭に発明された電信・電話は印刷とは無縁のものと思われた。実際印刷産業に何の影響も与えなかった。しかし印刷の役割が情報の伝達という認識があったら電信・電話の発明は異なった受け止め方をしていただろう。すなわち電信は印刷が持たない瞬時に情報を伝える能力を持ち、伝達範囲は世界中に拡がった。ニューヨークの株価は即座に東京に伝えられ東京の株式市場に影響を与える。電信・電話は商業の神経網になった。昔の印刷物は離れた場所でも運ばれ知識・情報を伝えた。離れた場所にも限りがあり、届けるのに日数がかかったが情報伝達の役割は果たしていた。しかし電信・電話の出現によって遠隔地に瞬時に情報を伝える役は終わった。2-2 ラジオ・テレビラジオ放送が日本で始まったのは1924年のことで百年前のことである。遠い放送局から声が届くのは驚きであり、その技術に感服した。当時は社会全体がのんびりしていて商業を除けば新し