ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.
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国際印刷大学校研究報告 第18巻
18■国際印刷大学校研究報告第18巻(2018)なることが多い)、測定者やサンプルによるバラツキが非常に大きく、明確に導電性の現象を確認することが出来なかった。このような中、1950年、東京大学理学部化学教室助教授、助手の赤松秀雄、井口洋夫は有機物もわずかであるが、確かに電気を通し、しかも、それは金属のような導体としてではなく半導体としての性質によることを発見し、J.Chem.Phy.,18,810(1950)に発表した。これは古くから電気の良導体であることが知られていたグラファイト平面を適当な大きさに切り取った分子に相当するペリレンやビオラントレンなどの縮合系多環芳香族化合物が、弱い半導性を示すことを見出した、世界で初めての発見であつた。その後、彼等は芳香族炭化水素のペリレンにヨウ素をドープすると、導電性が顕著に増加することを、1954年、Nature,173,168(1954)に発表した。これは後に、平面状のn電子系化合物を酸化して伝導性を持たせる、という概念・指針を示した。有機物、特に低分子有機物の導電性に於ける、赤松、井口の一連の研究は、当初は有機物が本当に電気を導くのかという疑問や反論のある中で、きわめて新しい概念が提出され、有機ELの発展に密接な関係があり、その端緒になった。有機物は低分子系、高分子系(ポリマー系)の2種類がある。低分子系導電性有機物は赤松等によって、1950年前後に、その概念が確立されたが、高分子系導電性有機物は、1977年の白川英樹等の導電性高分子有機物の発見まで待たねばならなかった。ポリアセチレンは直鎖状共役高分子有機物であり、通常粉末状で合成される。1962年に旗野らにより、長い共役二重結合連鎖を通じて電子伝導が行われる有機半導体であることを明らかにされた(M.Hatano,S.Kambara andS.Okamoto:J.Polym.Sci.51(1961)26)が粉末状のため、それ以上の研究対象にならなかった。東工大助手だった白川はポリアセチレンの合成実験中、誤って触媒濃度を1,000倍濃くして行ったところ、薄膜状のポリアセチレンが得られ、触媒濃度を更に、高めるとフィルム状になり、半導体性が確認された。(T.Ito,H.Shirakawa and S.Ikeda:J.Polym.Chem.Ed.12,11(1974))しかし、電気的対象として注目されたのは、1977年、白川がペンシルバニア大学のA.G.MacDiarmid,A.J.Heegerの両者の協力により、ポリアセチレンフィルムへヨウ素ドープによって銅や銀と同等の高い導電性を有することを発見した論文、Synthesis of Electricall-Conducting Organic Polymer:Halogenof Polyacetylene,(CH)(H.Shirakawa,E.J.Louis,A.G.MacDiarmid,C.K.Chiang and A.J.Heeger:JCSChem.Commum.(1977)578、Phys,Rev,Lett.39(1977)1098、J.Am.Chem.Soc.100(1978)1013)を発表した。この発見により、白川らは、2000年度ノーベル化学賞を受賞した。MacDiarmidは、受賞後のインタビューに答えて、導電性高分子の最大の応用は有機ELディスプレイだ、と答えている。2.2 有機ELの発見EL(Electro Luminescence)とは、電界発光のことである。電気エネルギーを光エネルギーに変換することで起こる。有機ELはこの電気―光エネルギー変換を有機材料で実現するものである。すなわち、蛍光体に電気エネルギーを与えて励起させ、励起状態から失活する際のエネルギーを光として取り出す現象をいう。有機電界発光素子の研究のきっかけはBridgman法による有機単結晶の作成で、1950年代以降に研究が進展する。その有機ELの研究は、1953年に有機色素を含む高分子薄膜に高い交流電流を印加すると発光することを発見したA.Bernanoseの研究、Anew method of emission of light by certain organic compound(J.Chim.Phys,1953)が始まりと言われている。彼らは、この色素含有高分子薄膜からの発光は、既に知られていたキャリア注入を伴わない真性ELの一種である無機ELと同様の機構で起こると主張したが、この有機物からの発光は、放電に由来する紫外光によって蛍光体が励起されたことによる二次的発光であったと現在では理解されている。さらに、1960年代に入ってNew York大のM.Poperら、Photogeneration ofChage Carriers in Anthracene(The Jounal of Chemical Physics,1966)やNRC CanadaのW.Helfrchら、Recombination radiation in anthracebce crystal(Physical Review Letters,1965)がアントラ