ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第18巻|富士精版印刷株式会社 FUJI SEIHAN PRINTING Co.,Ltd.

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国際印刷大学校研究報告 第18巻

15「印刷による表現」への挑戦■森下舒弘「印刷による表現」への挑戦Experiment of 「Print Expression」Nobuhiro MORISHITA「作家」と「印刷現場」が「オフセット版画」に挑戦●はじめに複製技術の高度化が進む現在、「美術印刷」の品質には目を見張るものがある。美術出版物や文化財の修復・複製、写真集など作家の気持ちに沿い、作品を解釈し、完成時を想定し、取り組んでいる印刷関係の方々を取材すると、今後の「印刷の社会的役割」を確認した想いになる。一方で、絵画作家の制作環境・制作手法が変化している事も事実である。肉筆のみで描画する手法から、肉筆原画(下絵)を基に、デジタル環境の中で、着色・グラデーション・テクスチャーなどを追筆して仕上げる手法である。モニター上では完成するが、画家にとっては、基データの完成で在って、作品の完成では無い。作品の完成は、プリントアウトなどによって実態化しなければならない。しかし、現状では、画家にとって満足のいく作品化はほとんど無い。こんな時、「絵師」の原画を基に、「彫り師」「刷り師」等によって完成した「浮世絵」を思い浮かべる。日本を代表する絵画美術である。●活動内容〇プロジェクトのスタート印刷産業の今後の展開を考慮していた時、社内人材育成を日常課題としていた企業経営者と出会う。企画から原稿制作を含めて、一貫した「PD(プリンティング・ディレクター)」を育成する計画が有った。「入稿」以降を中心に従事する現状では、原稿制作の実態も知らない。まして原画作家と直接の対話経験を持った事も無かった。両者の接点を構築する事から、このプロジェクトはスタート(2011)した。このプロジェクトチームは、印刷側からは、社長・工場長・営業担当・製版担当・印刷担当等、各部署の代表者でチームを作る。そして原画作家が参加し、企画進行担当として私が加わる。毎回10人前後が参加している。このプロジェクトの要は、作者の意図・想いをいかにして捉えるかにある。当初、ミーティングは、幾度も繰り返された。○今回のプロジェクト(2016 ~ 2017)過去5年間で、5人の作家が参加した。昨年から取り組んだ今回の絵画「呱呱2」の作家藤原ヨウコウ氏は、2回目の参加になる。印刷側は、各部署から5人が参加した。今回の全員参加ミーティングは5回。印刷設計は、5人で6案が提出された。それらの案を基に、基本設計を決定し、校正を重ね、完成となった。○プロジェクト進行:事前準備として、作家に作品の選択及び、制作を依頼する。第1次ミーティング⇒印刷設計(6案提出)⇒ミニチュア「試作」⇒第2次ミーティング(試作検討)⇒検討(基本設計決定)⇒校正(原寸)⇒第3次ミーティング(作品検討)⇒第4次ミーティング(作 品決定)⇒第5次ミーティング「オフセット版画・呱呱2」完成確認