ブックタイトル国際印刷大学校研究報告 第15巻
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国際印刷大学校研究報告 第15巻
■国際印刷大学校研究報告第15巻(2015)日本に於ける出版ビジネスと印刷会社の役割の変革Target for Japanese Publishing & Printing businessin the e-Book era.田中崇Shu TANAKA1.出版とは何か1-1.世界の出版産業の現状と問題点印刷、出版は長い人類の歴史の中で政治、経済、文化の発展のために最も重用な役割を果して来た。2000年ほど前には中国で紙が発明され、羊皮紙や木などの記録媒体なども利用して言葉を保存するようになった。現代社会でも生活、政治、経済、教育、芸術、宗教など全ての分野で、印刷物、出版物が必需品になっている。しかし、この数年のアメリカ大手IT企業のハード、ソフトの開発や情報流通基盤の世界戦略によって、日本の出版ビジネス、電子出版から、ネットによるマンガ、ゲーム配信まで大きく変化が始まり雑誌の休廃刊と共に雑誌配送、販売に頼って来た書店の閉店が進んでいる。この報告は、本年10月に韓国で開催された第16回国際出版学術会議での討議を中心に、主として書籍を中心とする出版ビジネスの基本理念、将来方針、電子出版対応、また、これからの日本の出版物への印刷会社の取り組み方についての要望についての報告である。1-2.日本の出版産業の現状と問題点従来、日本の出版は、憲法で保証された知識、教育、情報の収集、編輯、流通、を通じて言論の自由を支える基本の媒体であり、きわめて重要な存在であった。それだけに、最近制定された秘密保護法の運用によっては、電子書籍の進展により、紙媒体をも含んだ知識、情報流通、言論の自由が規制されることになり、国家による情報規制が、出版活動の制約までも含まれる情報管理制約となり日本の文化の基盤の弱体化にも影響すると危惧されている。1-3.日本の出版の国際化元年日本の電子出版は急速な進展を見せずに推移してはいるが、グーグル、アマゾンなどによる本や電子書籍の販売や、また、アップルやその他の手軽な電子書籍購読端末の普及、さらに国会図書館などの蔵書のデジタル化が進んだことで、出版物の売り上げが減少している。雑誌の販売減少は、雑誌ビジネスの基本である雑誌広告、ちらしなどが、テレビ、携帯端末へ移転したことによるものである。出版社は、出版の原点に基づいた出版ビジネスの法律と、新しいWEB媒体の法律とは、別な法律による体制を作る必要がある。また、日本の出版産業は、ほとんど日本語だけの出版をしてきた国際化の遅れから、欧米、インドのように、英語による各国の相互交流翻訳出版活動への参入が遅れている現状をどう改善して行くかの問題も抱えている。2.出版と印刷2-1.日本の出版印刷のカラー化1964年の東京オリンピックの報道の改革の要請から実用が開始されたカラーテレビ、新聞のカラー化に伴って、雑誌本文、広告のカラー化が必須となり、ダイヤモンド社は雑誌本文のカラー化を決定し、著者がその担当となった。雑誌本文、広告のカラー化のためには、次のような総合計画が必要であった。1)版式の選定、2)文字組版のコンピュータ化、3)カラー印刷の高速化、4)製本の高速化、5)用紙の選定など多くの問題があった。16