ブックタイトル白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
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白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
最愛の姫君を源氏の君に奉りたいと願っていました。源氏の君の須磨退去を知り、その頃、前さきの播はり磨まの守かみの明石の入道は、秋の空をゆく初雁に、望郷の念を強めます。琴を弾き、絵を描き、和歌を詠じては無聊を慰めるのですが、海あ人まの家とてまれな須磨の謫たっ居きょは、さびしいばかり。愛する人びとに別れを告げて、都をお離れになるのでした。二条院のお邸などを紫の上に託すと、源氏の君は後ろ髪を引かれながらも、最愛の妻の行く末をおも慮んばりか、時間を止めることができるなら、命だって惜しくはないわ――。「惜しからぬ命にかへて目の前の別れをしばしとどめてしがな――」別れを嘆き悲しみ、涙にくれる紫の上。流刑になる前に、自ら須磨に退去することを決心なさいます。弘こき徽でん殿のお大おき后さきのはかりごとにより官位を剥奪せられた源氏の君は、源氏の君はもう二位の上かん達だ部ちめでもなければ、右大将でもございません。この旅の空を飛んでいく声までもがいとおしく聞こえる」(光源氏)「初雁は都にいる恋しい人の仲間なのだろうか。旅の空とぶ声のかなしき」「初雁は恋しき人のつらなれやす須第十二帖磨Sumaま●須磨なりひらありわらのゆきひら神戸市須磨区。在原行平(業平の兄)が流された流刑地として知られた。●流刑死罪に次いで重い罪。官位剥奪(除名)以上の罪。●明石の入道源氏の生母・桐壺更衣といとこの関係にあたる。きりつぼのこうい30