ブックタイトル白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
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白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
源氏物語の構成『更級日記』の菅すがわらのたかすえのむすめ原孝標女は、一〇二一年(治安元年)、箱入りの「源氏の五十余巻」をもらい、夢中になって読んだと回想しています。「光源氏の夕顔、宇治大将(薫)と浮舟の物語に憧れた」と書いていますから、現在の本とほぼ同じ構成だったのでしょう。紫式部自筆の原本は消失しており、「源氏物語絵巻」の絵詞を除けば、平安時代の写本も残っていません。最も古いのは鎌倉時代初期の写本です。藤原定家(青表紙本の校訂者)や源光行・親行父子(河内本の校訂者)らが、当時の様々な伝本を校訂して、今日に伝わる源氏物語の原文テキストを確定しました。物語五十四帖は、三部構成として見るのが、現在の一般的な考え方です。◇第一部(「桐壺」から「藤裏葉」)桐壺帝の第二皇子・光源氏が、禁断の愛と、追放と失脚を経て、准太上天皇(上皇に準じる地位)にまで昇り詰める物語です。天皇になれなかった皇子が、さまざまな女性との遍歴を繰返しながら、この世の頂点を極めます。貴種流離譚・求婚譚・継子譚など、旧来の物語をベースにしながら、新しいロマンを生み出しています。◇第二部(「若菜」から「幻」)栄華を極めた光源氏の運命は、女三の宮の降嫁から大きく暗転します。特に「若菜」は、「若菜を読まねば源氏を読んだことにならない」(折口信夫)といわれ、全編中、最高の完成度を誇る傑作と高く評価されています。◇第三部(「匂う兵部卿」から「夢の浮橋」)光源氏はすでに亡くなっており、子や孫の時代です。不義の子・薫の君は、自らの出生に疑惑を抱き、仏道に憧れる厭世的な青年。孫の匂宮は光源氏の「花心」(好色)だけを受け継いだような若宮。この二人の公達と、宇治の姫君たちが織りなす愛の悲劇を通じて、男とは女とは何か、孤独な人間に愛は可能なのか、魂の救済はあるのか、千年を超えた今もなお読者に問いかけています。