ブックタイトル白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
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白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
激怒した弘徽殿大后は源氏の君の失脚をはかります。あろうことか父君の右大臣に発見されてしまうのでした。尚ないし侍となった朧月夜との逢瀬を重ね、その密会の現場を、のかみその真の愛と深慮を、源氏の君は知るや知らずや。「頼りにできるのは、もはや実の父のあなただけ……」出家の道をお選びになります。このことを危ぶんだ藤壺の宮は、御お髪ぐしを削り、源氏の君の恋の情炎は熄やむことがありません。藤壺の宮は源氏を春宮の唯一の後見として頼みに思うのですが、藤壺の宮がお産みになったさて、桐壺院の崩御を機に、春とう宮ぐ弘こうき徽でん殿のお大おき后さきを廃嫡しようとしていました。と右大臣家の人々は、源氏の君は野のの宮みやに滞在する御息所を訪ね、別れを惜しみます。斎さい宮ぐうの姫と一緒に、伊勢に下向することになりました。六ろく条じょ御うのみ息やす所どこはろ、源氏の君への思いを断ち切り、ざいませんこと?」(ろ六くじ条ょう御のみ息やす所どこ)ろに。榊の葉を折って今ごろ『変わらぬ愛』だなんて。お門違いではご「三輪のお山とは違って、この野のの宮みやにはめじるしの杉もございませんのいかにまがへて折おれる榊さかきぞ」「神かみ垣がきはしるしの杉すぎもなきものを賢第十帖木さかきSakakiさかき●賢木榊とも。常緑樹の総称。特に神事に用いる。「変わらぬ愛」の喩え。さいぐう●斎宮天皇の即位ごとに選定され、伊勢神宮に奉仕した未婚の内親王または女王。いつきのみや。斎宮は伊勢に入る前に、嵯峨野の野宮(野の宮。「仮の宮」の意)で、一年間の精進潔斎を行った。ないしのかみ●尚侍ないしのつかさにょうごこうい内侍司の長官。女官の最高位。女御・更衣と同じく帝の寵愛を受けた。ののみや26