ブックタイトル白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
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白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
お兄様のようにお慕い申しあげたのに、と姫君は裏切られた思いです。喪が明けた源氏の君は、すっかり大人びた紫の姫君と新にいまくら枕を交わすのですが、源氏の君はその死を悼み嘆きます。ようやく夫婦らしい愛情も芽生えたというのに……。ご懐妊を機に、葵の上との心の隔てもなくなり、葵の上は若君(夕霧)をお産みになると、すぐに亡くなってしまいます。源氏の君は物の怪の正体が御息所の生いきす霊と知り、衝撃を受けます。だまその声やしぐさは、葵の上ではなく、御息所とうり二つでした。ある時、病床から不意に源氏の君に懐かしげに語りかけてきた一方、出産を控えた葵の上は、物もの怪けに苦しめられ、お命さえ危ぶまれます。この車争いの一件以来、御みや息すど所ころは屈辱感に人知れず物思いを深めていきました。「こんな未練がましい、惨めな姿を見られてしまうなんて……」車争いになり、乱暴の限りを尽くします。葵の上の従者たちは、人目を忍ぶろ六くじ条ょう御のみや息すどころ所一行と見物の場所をめぐり、ご懐妊中の葵の上も、その晴れ姿を見物にお出かけになりました。葵祭の御ご禊けいの御行列に、源氏の君もお供することになり、別人のようでした。下した前がいの褄つまを結んで」という声もしぐさも、葵の上ではなく、「嘆き苦しんで、空にさまよう私の魂をつなぎとめてください。その人にもあらず、変はりたまへり。したがひのつま」と、のたまふ声・けはひ、「嘆きわび空に乱るるわが魂たまを結びとどめよ葵第九帖あおいAoiしたがいつま●「したがひのつま」衣の下前の褄(端)を結ぶと、身から抜け出た魂が元に戻ると信じられた。●葵祭賀茂神社の大祭。二葉葵を車や冠に付けるところから。祭の前に、斎院が賀茂河原で御禊(みそぎ)を行う。ごけい24