ブックタイトル白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
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白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
氏物語源氏物語とその時代『源氏物語』は、平安時代中期に成立した長編王朝ロマンです。「世界最初の長編小説」といわれることもあります。藤原道長が栄華を極めたこの時代には、後宮ではお妃たちが帝の寵愛を競いました。教養あるインテリ女性たちがお妃の家庭教師となり、華やかな後宮サロン文化が栄え、『源氏物語』『枕草子』などの優れた王朝文学が生み出されていきます。源氏の前に源氏はなく、源氏の後には源氏はないといわれます。紫式部は『竹取物語』『伊勢物語』『蜻蛉日記』などの先行する物語文学・日記文学、『白氏文集』などの漢文学を換骨奪胎しながら過去の系譜を絶する壮大なロマンに仕立てました。以後、源氏物語は文学のみならず、絵画・香道・能楽など、多方面の文化に大きな影響を与えました。また有ゆうそくこじつ職故実と結びつき、王権儀礼の準拠にもなります。武家の世となり、京の都は戦乱で何度も灰燼に帰しましたが、この物語の力により王朝文化は存続しえたのです。西洋世界に初めて本格的に紹介されたのは、一九二五年、ウェイリーの格調高い英訳によってです。プルーストの『失われた時を求めて』に通じる、記憶と時間が円環を織りなす物語構造が、高い評価をもって受け入れられました。今日ではフランス語・ドイツ語・ロシア語・中国語・朝鮮語などにも翻訳されています。