ブックタイトル白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
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白描源氏物語│富士精版印刷株式会社
12昼より、西の御方の、わたらせ給ひて、碁打たせ給ふ。お昼から、西の御方さま(軒端荻)がお見えで、碁をお打ちになってらっしゃいます。[碁を打つ軒端荻(左)と空蝉(右)]空蝉が忘れられない源氏の君は、継ままむすめ娘の軒のきばのおぎ端荻と碁に興じるその姿を垣間見ます。女のよそ行きの顔しか知らなかった源氏の君は、二人のくつろいだ姿が新鮮で、少し興奮ぎみです。若い軒端荻の官能的な美しさに比べ空蝉は見栄えはしないものの、源氏の君はつつましく品のあるたしなみ深さを見出します。夜のふけるのを待ち、源氏の君はふたりの寝所に忍び込むのですが、気配に気づいた空蝉は薄うすぎぬ衣を残して、そっと寝所を離れます。寝所に一人残されたのは軒端荻。源氏の君が人違いに気づいた時はすでに遅く、それと悟られぬように取りつくろい、契りを結んでしまいます。源氏の君は空蝉が残した小こうちぎ袿をそっと持ち帰ります。かたくなに拒み続ける空蝉に、それでも源氏の君の想いは深くつのるのでした。空蝉第三帖うつせみUtsusemi